口蹄疫対策民間ネット
宮崎口蹄疫の防疫対策を検証し、新しい防疫体制の構築に参加するための民間ネット
牛豚と鬼

2010. 9. 2 開始  2010.9.17 更新
連絡先 畜産システム研究所 E_mail: satousi1@yahoo.co.jp


 今回宮崎県で発生した口蹄疫について、「発生前後からの国、県などの対応や殺処分・埋却などの防疫対応、口蹄疫対策特別措置法に基づく措置の運用等を検証し、今後の口蹄疫対策をはじめ、家畜伝染病に対する危機管理のあり方に資するため、第三者からなる口蹄疫対策検証委員会」が設置されました。第1回口蹄疫対策検証委員会(2010.8.5)には、家畜伝染病予防法口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針などが配布資料として提出されています。
 しかしこれらの法や「防疫指針」の原点には、「口蹄疫という恐ろしい病気を一刻も早く封じ込めて撲滅するためには、殺処分して埋却する、これしかない」という考え方があり、この考え方こそが口蹄疫を恐ろしい病気に仕立て、現場を殺処分と埋却という戦場の地獄に陥れたのではないでしょうか。どの範囲の殺処分かは別にして、殺処分により牛や豚がいなくなると口蹄疫も終息することは確かですので、殺処分が始まった戦場では、これに反対し冷静な防疫対策を講じることは困難であったと推測されます。それは丁度、戦争が始まるとこれに抵抗することは非国民とされた嫌な状況と重なって見えます。この「防疫指針」は、2001年英国口蹄疫大発生の惨事を防止できなかった当時の口蹄疫対策規則(EEC指令.1985) と同じ考え方ですので、発生前後の問題よりも 防疫指針(2004)が大規模な殺処分の戦場を回避するための科学的な対策になっていたか、 家畜防疫を総合的に推進するための指針 (2001)がどう制度化されていたか、こそが問われるべきでしょう。

 ことにこの「防疫指針」は2000年に我が国で92年ぶりに発生した口蹄疫の防疫体制を参考にして2004年に制定されたものですが、当時は、2001年の英国口蹄疫大発生時の大量殺処分が経済的、社会的に膨大な損害を与えた反省に加えて、ワクチン接種による抗体と自然感染の抗体を区別できるマーカーワクチンが開発されたこともあり、 OIEコード改訂 (2003.8.26)EU規則改正(2003.9.29) のように、大量殺処分の回避のための緊急ワクチン接種は世界の流れとなっていました。我が国においても世界の流れに沿って積極的なプロジェクト研究が推進され、2004年には自然感染とワクチン接種の抗体識別検査法が報告されています。その後、EUの新しい家畜衛生の基本戦略(2007-2013)は、治療から予防へ(Prevention is better than cure)、不必要な淘汰(殺処分)からワクチン接種へ(Vaccination is better than unnecessary culling)とシフトしています。

 当時「防疫指針」を検討した牛豚等疾病小委員会においても、事務局から「ワクチンについては、考え方は変わっていないか。摘発・淘汰が基本というのは世界の趨勢であることに変わりないか」という質問が出ましたが、「将来的に感染防御が可能なワクチンが開発されれば別だが、現段階ではスタンピングアウト(摘発・淘汰)方式の考え方は変わらない」と委員側から英国で問題となった防疫方式を踏襲する考えが示されました。また、この防疫方針は「少なくとも5年ごとに見直さなければ陳腐化してしまうので、最低限の期間として設定しているもの。状況が変われば方針を見直すことになる」という事務局の説明があったにもかかわらず、その後の見直しはなされていません。当時の委員の内3名は現在も継続して委員を勤めていますので、彼らは「防疫方針」の成立の経緯を熟知し、その後の世界の動向を責任を持って監視していたはずです。

 それにもかかわらず口蹄疫対策検証委員会では、「備蓄ワクチンが必ずしも流行しているウイルスに有効とは限らず、また、簡易診断キットにも技術的限界があり、過度な期待を生じないよう適切に科学的な情報を提供していくことが必要。」と、あたかも無知な国民の啓蒙が必要かのごとき意見も見受けられます。流行しているウイルスに有効とは限らないワクチンを、なぜ 70万ドーズも備蓄しているのか。アジアにおけるウイルス情報から緊急ワクチン製造をという考えは持たないのか。また、口蹄疫ウイルスの簡易迅速遺伝子検査について検討したことがあるのか。今日、遺伝子検査技術は目覚ましく進歩しています。無策な防疫体制を弁護することではなく、国民の期待に添うように防疫対策に万全を期すことこそが委員会の責務ではないでしょうか。今日はインターネットの普及で情報は瞬時に世界を駆け巡ります。口蹄疫防疫に関係する立場の専門家は常に世界の動向を注視し、これを翻訳して広く国民に情報を伝達することから、家畜防疫を総合的に推進する体制を構築していく必要があるでしょう。



 この度、農水省から目を疑うような口蹄疫に関する施策が二つ発表された。「宮崎県における移動制限解除後の清浄性確認検査の実施について (2010.9.3)」と「口蹄疫に関する机上防疫演習の実施について(2010.9.9)」である。宮崎口蹄疫の終息宣言は「清浄性確認検査」がなされて出されたのではないのか。OIEに対して我が国の清浄ステータスの認定申請に必要だから血清抗体検査をするとは、順序も重要度も全く逆で唖然とする。また、防疫演習は「防疫指針」を基にして作戦が立てられるのだろうが、その全殺処分の防疫指針に問題があるから農家や国家に莫大な損害を与えたとは考えないで、殺し方や埋め方や埋める場所を改善すれば、問題を解決できると考えているのであろうか。科学技術が発達し、経営規模も大きくなっている今日なのに、全殺処分に代わり農家や国の負担を軽くする有効な防疫対策の科学的方法はないと信じているのであろうか。なぜ、農場で簡易迅速に検査できるウイルスの遺伝子検査を開発、導入しないのか。この検査で陽性牛のいる牛房単位で殺処分するとともに、早めに緊急ワクチン接種して感染拡大を防止できれば、全殺処分を前提とした防疫演習は作戦を変更する必要が出てくる。せめて、防疫演習の結果、「防疫指針」を変える動きが出てくるのを神に祈るしかない。
 医者である参議院議員 森田高さんでさえ、20年も遅れている農水省の家畜衛生部門と官学癒着を嘆いているのだから、ここでつぶやいているだけでは「防疫指針」を変える動きが出ないと思うと悔しい。

 宮崎口蹄疫の惨事を2度と繰り返さないために  広島大学名誉教授 三谷克之輔



 このネットは、宮崎口蹄疫の防疫対策の検証を通して、新しい防疫体制の構築に参加するための民間ネットです。防疫体制は生産体制と密接に関わってきますので、現場の方々と共にこのHPで問題点と改善案を示し、ネット参加者によるMLでの意見交換を通して現場で切実な問題の打開策や法改正等の要望書を作成したいと考えています。また、このネット上の作業それ自体が家畜防疫を総合的に推進する一役(翼)を担っていくことになれればと願っています。
 口蹄疫防疫体制の基本構想、検証項目や政府への要望事項等は現在検討中ですが、下記HPに掲載しています。

宮崎口蹄疫の検証と対策

 宮崎口蹄疫で発生した問題について、いろいろな疑問、問題点、改善案、要望等について意見交換を始めたいと思います。上記掲載項目以外の問題についてもメールで連絡を取り合い、必要なら各自のHPやブログとリンクしたり、上記HPに追加して充実した内容にしていただき、単なる批判ではなく改善の一端を担うネットにしていきたいと思います。
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