【検証】中国産稲わらの感染源の可能性


 口蹄疫の感染拡大を阻止するためには、感染源と感染経路を究明することは重要で基本的な事項です。しかし、日本の疫学調査はBSEの疫学調査でも経験しましたが、これを曖昧にするためにあるのかと思うほどに、論理的かつ科学的解析に欠けています。これまで口蹄疫の疫学調査の問題点については、次の指摘をしてきました。

   疫学調査チームは何のための仕事をしたのか(2010/12/17)
   「口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめ」の問題点(2012/10/07)
   真実は誰のために?(2013.4.1)

 最近報告された「口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめ」に関する補完報告(2013.3.27)でも、東アジアからウイルスが侵入したとして、感染源を曖昧にしています。2000年と2010年の口蹄疫で共通しているのは感染源を隠ぺいしていることです。すなわち、2000年から今日まで疫学調査の原点である感染源の解明という本分を忘れ、津田疫学調査チーム長を含めた動物衛生研究所と川島課長を責任者とする農水省動物衛生課は感染源の政治的隠ぺいに協力しています。政治と行政が癒着した『権力の腐蝕の構造』が、2000年から今回の口蹄疫対策まで続いていることを厳しく追及しなければなりません。『権力の腐蝕』は情報の隠ぺいにより進んでいきます。したがって、『宮崎口蹄疫の真相』を究明するには「公開質問状」に加えて、隠ぺいされた情報を掘り起し、何故隠ぺいを必要としたのかを検証していく必要がありますが、ここでは中国産稲わらを感染源としなかった事実を明らかにしたいと思います。

1.2000年の感染源は『野菜の敷わら』 ただし、公表せず

 2000年には、宮崎の口蹄疫発生農家が使用していた稲わらの販売店から輸入ロット、さらに同一ロットの稲わらを使用した全国の農場の徹底的な追跡調査で、北海道の農場の感染を確認しています。ただし、このような明確な証拠があるにもかかわらず、なぜか正式に感染源の公表はしていません。感染源は麦わらだとも言われましたが、実際には『野菜の敷わら』だったと「OIEコードの改正に関する意見交換会」で津田研究管理監(今回の疫学調査チーム長)は次のように明らかにしています。「あの稲わらについては、当時は飼料として使われるとは思っていなかったんですね。だから家畜防疫上の検疫の対象外でした。野菜の敷わらだったんですね。それがたまたま牛の口に入った(p.35の末尾)」

2.2010年の感染源も『隠ぺい』されている

   1例目で中国産稲わらを使用していたことについて、「口蹄疫の疫学調査に係る中間とりまとめ(以下、「中間とりまとめ」と略す)」(p.24)では次のように報告しています。「平成22年1月12日に輸入されたロットの中国産稲わらを2月16日に購入しているが、本ロットの中国における加熱処理施設は、我が国の指定処理施設であることは確認済みである。輸入時における検査において、家畜衛生条件に合致していることが確認されており、ウイルス侵入の要因となった可能性は極めて低いと考えられる。」

 これに対して、宮崎県口蹄疫対策検証委員会報告書(2011.1) (p.34)は次のように反論しています。「国の疫学調査は、中国からの輸入粗飼料は農林水産省の立ち会いのもとにくん蒸が行われていること等から感染の原因となった可能性は極めて低いという前提に立って検証を行っているが、感染原因・経路を特定することの重要性に鑑みれば、そのような前提条件をはずして徹底的な調査を行うべきである。」

 また、口蹄疫の発生が確認された4月20日の直前の14日に、中国産稲わらの品質の劣悪さを批判したブログがありました。国は「輸入時における検査において、家畜衛生条件に合致している」という建前で、中国産稲わらの品質に問題はないとしていますが、宮崎県口蹄疫対策検証委員会が指摘する通り、建前ではなく実態について徹底的に調査する責任があります。

 しかし、農水省の「口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめ」に関する補完報告(2013.3.27)では、日本に侵入した口蹄疫ウイルスは「少なくとも2010年初期までに東南アジアの国から中国に侵入し、極めて短期間のうちに中国国内でも感染が拡大したと推測された」としながら、中国からの侵入であることを曖昧にして、「この東アジア地域で流行していたウイルスが、人あるいは物を介して我が国に侵入したと推定された」と結論しています。なぜ、今回も感染源を隠ぺいしているのでしょうか。

3.県が開示した現地調査から見えてくる中国産稲わらの取り扱い

 2010年は中国産ワラを使用していた多くの農場(1例目2例目3例目等)で感染が確認されているので、この地域では中国産ワラが日常的に使用され、それを販売する地元業者(例えば日向運輸)は大量の中国産ワラを供給していたと思われます。

 県の現地調査の情報公開請求によれば、1例目に関する一切の文書は11枚の診断等の報告書が開示されていますが、中国産稲わらについて、1枚目では「1月に購入(手書き)」、3枚目では「1月まで給与(プリント)」、9枚目では「3月中旬まで、現在は自家産稲わら(プリント)」と報告が違っています。

 2例目の現地調査では飼料について別表に詳細に記録され、中国産稲わらを肥育用に使用しています。なお、飼料について、「中間とりまとめ」(p.36)では、「本年3月に入ってからは3社計6回の搬入が確認されている」と報告していますが、県の現地調査では何故か3月の購入日付は消去されています。

 3例目の稲わらについては、〇〇運輸、敷料予定・未使用とあります。敷料用を購入して未使用としているのは不自然ですが、「考えられない安さで稲わらを購入している牧場があったという噂」は本当だったのでしょう。「7例目の農場には粗悪な粗飼料が置いてあったが、感染確認後に立派な稲わらに置き換わっていた」という目撃談もあるので、2000年の野菜の敷わらが飼料に使われたのと同様な状況が、今回もあったのではないでしょうか。

 ここで示した最初の3例の農場は、いずれも中国産稲わらを使用していますので感染源の可能性を疑うべきですが、県の現地調査ではこれを重視するのではなく、隠ぺいする態度がうかがえます。この態度こそ県が感染源を隠ぺいしようとした証拠ではないでしょうか。

4.安愚楽牧場における給与飼料の調査

 7例目は稲わら(県内産)を使用していると申告しています。7例目と同一経営の8例目は県の現地調査で「〇〇〇と同じ」と給与飼料の情報は伏せられています。この7例目、8例目は全国に牧場を持つ安愚楽牧場のこの地域の13直営農場の、それぞれ第7農場と第8農場で和牛肥育農場です。このような全国規模の大型経営で国産稲わらを使用するのは、経済的にも資源的にも非常に困難だと思います。安愚楽牧場における給与飼料等の調査結果は表1にまとめておきました。同じ直営の第9農場は大型和牛繁殖農場ですが、飼料につては「本社に問い合わせが必要」とし、現地調査もそのままの記録を残しています。他の4つの農場の飼料調査は「別紙」として公開されていません。





























5.ワクチン接種して殺処分した第6農場

 さらに、今回はワクチン接種をして殺処分しています。日向市,木城町,新富町まではワクチン接種終了日が公表されていますが、それ以外の川南町を中心に感染が拡大した地域では6月30日にワクチン接種から殺処分と埋却の全処理が終了したという報告しかありません。
 その中で感染を拡大させた安愚楽牧場の第7農場と第8農場に近い第6農場は、感染が集中した川南町にありながらワクチン接種して殺処分されています。しかし、川南町で最初に感染した安愚楽牧場でこの第6農場だけが感染しなかったとは考えられません。最も早く感染した農場であったか、早い時期に感染した牛をこの農場に移動していたとすれば、自然治癒していて健康牛として取扱いワクチン接種をすることもできたでしょう。ワクチン接種して殺処分した本当の理由は、証拠の隠ぺいにあったのではないかと疑える県や国の対応です。この第6農場のワクチン接種は誰が担当したのでしょうか。現地調査の隠ぺい的体質と合わせて、安愚楽牧場の責任を回避させる意図が県と国に伺えます。県は安愚楽牧場に厳重注意をしていますが不注意のような軽い罪ではなく、県と国が絡んだ意図的な犯罪であり、関係者は重罪に処せられるべきではないでしょうか。

6.中国産稲わらの販売業者の疫学調査

 県や国は中国産稲わらの使用状況については、農家の聞き取り調査よりも地元の販売業者を調べれば容易に把握できるはずです。4月28日に開催された第11回牛豚等疾病小委員会(p.15)では、「(1例目と同じ)中国産の稲わらを同一ロットで輸入して使用しているのが25農場ございました。そのうち25農場について異常がないことが確認をされております。」と報告しています。この25農場を含めて2〜4月に販売した中国産稲わらについて、県と国は詳細な内容を開示すべきですが、現地調査では安愚楽牧場に協力する態度を示し、曖昧にしています。これら13直営農場は疫学的に関連が深いので、本来なら徹底的な調査が必要ですが、県や国はなぜ調査を曖昧にしたのでしょうか。
 疫学調査チーム長の津田委員は国会の衆議院農林水産委員会における参考人質問 (議事録)で、江藤議員が「行政の立入調査権」の強化について質問したのに対して、「(立入調査権が)あったから画期的に進んだかというと、ちょっと疑問符がつくところでございます。」と答えています。立入調査権でなくても調査はできたのに、それを国(県も?)が関与してさせなかったという意味にとることができます。そうだとすれば津田委員は加害者側ではありますが、実は組織の被害者であるのかもしれません。

 中国産ワラを使用していた多くの農場で感染が確認されているにもかかわらず、中国産ワラを使用していない水牛農場を初発農場にすることで、稲わらの感染源の可能性の徹底的な疫学調査を回避しているように思います。ここに口蹄疫が宮崎県だけで2度も発生した、感染源に関係する裏の事情があるのではないでしょうか。

7.中国産稲わらを感染源としなかった異なる理由

口蹄疫の疫学調査に係る中間とりまとめ(p.25)では、中国産稲わらが感染源でない理由を次のように説明しています。「なお、本ロットを使用した農場のうち、一部が発生農場(72例目:2月6日購入、245例目:2月13日購入、262例:2月8日購入、284例目:2月25日購入)となっているが、いずれの農場においても、稲わらの使用時期はウイルスが侵入したと推定されている時期よりもかなり早いことから、ウイルス侵入の要因となった可能性は極めて低いと考えられる。」

 一方、「口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理について」(p.6)では、この件について次のように説明し、第15回牛豚等疾病小委員会(2010.8.24)で承認されています。
 「1例目になりますけれども、そこで3月中旬まで中国産稲わらが使用されていたことが確認されています。中国産稲わらについては、10年前の発生の際、ウイルス侵入の原因として疑われているものですが、この1例目の農場で使われていた中国産稲わらの販売業者は○○○なのですけれども、そこの伝票の調査から、当該稲わらのロットは中国の大連にあります○○○という認定工場で加熱消毒されているものでありまして、 同日通関している稲わらはいろんな農場に行っているのですけれども、そこの農場での発生が確認されていないということから、この「中国産稲わらが感染源となった可能性は極めて低い」というふうに記述いたしました。

 1例目と同一ロットで輸入された中国産稲わらは多くの農場で使用されているが、他の農場では感染は認められていないという「中間的整理」と、何例か発生しているが発生の時期と中国産稲わらの購入時期(ウイルス侵入時期)が違うという「中間とりまとめ」では同じ説明にはなりません。
 また、7例目は1例目より早く感染しながら、4月24日の立入り検査の日まで県に届出ていません。この農場の4月8日に「道路側牛舎の複数頭に食欲不振が確認された」という申告から推定発症日を4月8日とし、ウイルス侵入日を4月1日と推定したウイルス侵入時期には全く根拠はありません。安愚楽牧場では2月中旬から口蹄疫の症状が認められていたという内部告発もあり、口蹄疫の疑いで2月15日に届けた例もあります。根拠がないウイルス侵入時期を前提に、中国産稲わらが感染源となった可能性は極めて低いと言うことは事実のねつ造です。













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