ハイブリッドデザイン
2008.7.26
ハイブリッドとは
ハイブリッド車の普及により知られるようになったハイブリッド(hybrid)とは、もともと雌豚と雄猪の子、またはローマ人の男と非ローマ人の女の間に生まれた子のように雑種とか混血という意味のラテン語(hybrida)に由来し、メンデルがエンドウの実験で使用して以来、遺伝学の分野で使用されてきた。メンデルは論文「雑種植物の研究(Versuche uber Pflanzen-Hybriden, 1866. 口頭発表は1885年)」の序言で、ゲルトナーの「植物の雑種(Die Bastarderzeugung im Pflanzenreiche)」やヴィヒュラの「柳の雑種(die Bastarde der Weiden)」を紹介しているが、彼自身の研究ではこのBastardではなくHybridを雑種の用語として使用している。メンデルが雑種をBastardではなくHybridと表現した理由には、これまでの雑種の研究ではない画期的な新しい研究だというメンデルの自負心が秘められているのではなかろうか。牛のハイブリッドは不可能とされてきた畜産界において、牛の品種間交雑に交雑種という言葉が使用されているが、これに対して私の研究は単なる雑種の研究ではないハイブリッドの研究なのだと主張してきた私には、ハイブリッドに託したメンデルの気持ちが僭越ながら理解できるような気がする。
メンデルは植物栽培の豊富な経験から、両親から子への形質の伝わり方に一定の法則があることに気づき、この法則を明らかにするために計画的に交配実験をして優劣の法則、分離の法則、独立の法則を明らかにし、遺伝学の扉を開いた。メンデルの報告は現象に潜む遺伝の法則を数理的に解明したが、当時の博物学的な現象の説明方法に馴染まず理解されなかった。没後16年(発表後35年)経過した1900年に、コレンス、ド・フリース、チェルマクの3人によって独立にメンデルの遺伝の研究が再発見され、コレンスがこれを「メンデルの法則」と命名した。メンデルの法則は、フィールドにおける豊富な植物栽培の経験から発想し、フィールドの実験によって明らかにしたフィールド科学の成果であり、フィールド科学がその後の科学的方法の基礎を築いたことを記憶に留めておきたいものである。
F1とハイブリッドは同じである
雑種のことをメンデルはハイブリッドと言い、雑種同士の交配によって得られた個体群をハイブリッドの第一代目( Die erste Generation der Hybriden )と呼んだ。これを英語に訳すと The First Generation From the Hybrids となる。1900年の「メンデルの法則」の再発見後、英国の遺伝学者ウイリアム・ベイトソン(W.Bateson;グレゴリー・ベイトソンの父)は、メンデルの論文を英訳(1902年)して英語圏に積極的に紹介し、遺伝学 (genetics)、対立遺伝子 (allelomorph)、ホモ接合体 (homozygote)、ヘテロ接合体 (heterozygote)などの術語を導入する等、近代遺伝学の成立に大きく貢献した。
近代遺伝学ではハイブリッドに関する表記についても、親の世代(P世代,parental generation)および子の世代(F世代,filial generation)の術語が導入され、雑種第一代を子の1代目(F1,
the first filial generation)、雑種2代目、雑種3代目をF2、F3と呼ぶように用語の整理がなされた。すなわち、メンデルのハイブリッドは現在ではF1(エフワン)、F1同志の交配によって生じたハイブリッドの第一代目、すなわちF1どうしの交配でうまれたものはF2(エフツー)と呼んでいる。
ハイブリッドから車を連想する人が多いように、F1(エフワン)からはカーレースのFormula One(フォーミュラ・ワン)を連想する人が多い。農業と自動車産業の圧倒的な情報量の差はいたしかたないとして、メンデルのハイブリッドを英語圏に紹介する際に術語の使用法が整理されてハイブリッドをF1と呼ぶようになったことが原因して、農業分野においてもF1とハイブリッドが同じであると思わない人が多いのは、メンデルに対して申し訳ないことである。
ヘテロシスとは
一般に近親交配をすると繁殖能力や強健性等が低下(近交退化)するが、雑種では活力が向上する。これを雑種強勢(hybrid vigor)またはヘテロシス(heterosis)と言う。ヘテロシスは、トウモロコシの雑種強勢を研究していたG.H.Shullがheterozygosisをシンプルにした造語(1911年)である。雑種強勢(ヘテロシス)は、何故あらわれるのか。一般には近親交配により、ある形質にとって有害な劣性遺伝子がホモになり形質の低下があらわれるが、雑種ではホモがヘテロになることで有害な劣性遺伝子の発現が抑えられるとされているが、未だに完全には解明されていない。
交雑育種
外山亀太郎はカイコの遺伝に関する実験的研究を始め、明治39年(1906年)にはカイコの雑種強勢を報告している。また、雑種強勢を利用したカイコの生産を提唱し、ハイブリッド品種を世界で初めて実用化し、昭和のはじめ(1920年代後半)には全国に普及している。
トウモロコシのハイブリッド品種は、1930年代(昭和5年〜15年)にアメリカで開発された。鶏のハイブリッドは1950年代にアメリカで開発され、昭和36年(1961年)に施行された農業基本法による選択的規模拡大と農産物輸入の促進策により、1962年には鶏および鶏肉の輸入が自由化され、アメリカからハイブリッド鶏が怒涛のように日本に押し寄せ、国産鶏の改良と生産は壊滅状態になった。
ハイブリッドデザイン
現在作成中
参考文献
F1生産の理論と実践
科学の歩みところどころ. 第14回 遺伝子発見への道(鈴木善次)
教科学習情報 理科
高等学校 理科
啓林館
遺伝学電子博物館(国立遺伝学研究所)
遺伝の法則
細胞の生物学
雑種植物の研究,メンデル(岩波文庫)
メンデルの「雑種植物の研究」の新訳出版の紹介と意見交換
メンデルの著した「植物雑種の研究」原典(ドイツ語版、英訳版、英訳版注釈つき)
MendelWeb
G.H.Shull, What is "heterosis" ?
世界初ハイブリッド品種の育成−蚕の外山亀太郎博士
作物の一代雑種
−ヘテロシスの科学とその周辺−,山田実,養賢堂,2007
植物の世界「ハイブリッド品種」
GLNからこんにちは
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